私が学習指導において、子どもが自分で「丸つけ」と「直し」をすることを大切にしています。
特に小中学校段階から正しいやり方を身につけていくことが、子どもの学習効果を高める上で大切だと思っています。
この記事では、
- 丸つけと直しを子どもが自分でやるメリット
- 丸つけ直しのやり方
の2点について書いていきます。
そもそも、学習で大切なことは何か?
まず、そもそも学習で大切なことは何かを考えてみましょう。
私は、学習で大切なのは、
- 「自分は何を間違えたのか」
- 「どのように違っていたのか」
を学習者自身が考え、理解し、改善することだと思っています。
そして、その力を身につけるために大切なのが、「丸つけ」と「直し」だと考えています。
自分で丸つけ直しをするメリット
子どもが自分で丸つけと直しをすることのメリットは次の4点です。
間違いに自分で気づく力が身につく
一つ一つの解答に自分で丸をつけると、当然自分の間違いを自分で見つけることになります。
単純に丸をつけること自体には意味はありませんが、「自分の間違いに気づく」という学習のスタートラインに自ら立つという意味で重要です。慣れてくると、
- 「この問題は自信なかったんだよなー」
- 「自分はいつもこういうタイプの問題を間違えちゃうな」
など、気づく力が磨かれていきます。
自分がどこをどのように間違えたのか考える力が身につく
「直し」では、丸つけで気づいた自分の間違いについて、答えを見て確認することで、「どこを」「どのように」間違えたのか考える力が身につきます。
親や先生が書きこんだ赤ペンをただ眺めるだけとは大違いです。
どこがどのように違うのか、自分自身で能動的に確かめることに価値があります。
「丸つけ」「直し」を継続して習慣づけることで、自ら学ぶ力が身につく
そして、「丸つけ」「直し」を継続して行って習慣づけることで、自ら学ぶ力が身につきます。
親や先生がいなくても、自分で学習を進めることができるようになるのです。
これは、学校だけでなく、様々な場面に応用できる力です。学習を通して、子どもが自立し成長することができれば、それはとても嬉しいことです。
小中連携(中1ギャップ解消)にもつながる
中学校では、問題集などの学習で生徒が自分で答えを確認して「丸つけ」と「直し」をすることはほぼ当たり前だったように思います。
私が中学校教員の立場から気になっていたのは、生徒が入学時点で自分で丸つけと直しをすることに慣れていないという点でした。
(少なくとも私が赴任した)小学校では、丸つけと直しのほとんどを教師が行なって「しまって」いたのです。
これは小学校ではよくあるパターンだと思いますが、これでは児童が「どこを」「どのように」間違ったのか自分で気づき考える力が身につきません。
そして、多くの子が返されたノートに目も通していないという現状もあります。これでは、教師が費やす時間が無駄になるだけでなく、児童が自ら気づき考える場を奪うことになっています。
中学校からの学びを更に高めていくためにも、小学生から自分で丸つけと直しをして力を高めておくことは、「小中連携」「中1ギャップ解消」にもつながると考えられます。
親や教員の負担軽減
宿題の丸つけを親がやることになっている学校もあると聞きます。毎日の丸つけは、保護者にとって決して少ない負担とはいえません。
子どもが自分で丸つけと直しをすることの本来の目的ではありませんが、結果として負担減につながります。
また、「結果として教員の業務削減にもつながる」というメリットもあります。
小学校教員は「丸つけ」が業務に占める割合が中学校教員に比べて多い気がします。休み時間などを費やして慌ただしく行っていた丸つけの時間を、他の業務や子どもたちとの時間に使うことができます。
教員の心に余裕があることが、子どもにも良い影響を与えますから、これは大きなメリットと言えるでしょう。
あくまで子どもの学習効果を高めるために行っていることが、結果として業務削減にもつながるのならやらない手はありません。
子どもが自分で丸つけと直しをするやり方
算数・数学を例に書きますが、どの教科も基本的にこのやり方でできます。
①自分の力で解く
まずは、自分の力で問題を解きます。ポイントは、
- わからない問題はとばしてよい
- 途中の式は消さずに残す
の2点です。
②答えを見ながら、合っていれば◯、間違っていれば✔︎をつける(赤ペンで)
次に、答えを見ながら、合っていれば◯、間違っていれば✔︎をつけます。これが【丸つけ】の部分です。自分の解答なのか、答えを写したものなのか区別するために、赤ペンなどでやるようにしましょう。ただ答えを見て確認するだけなので、小学校低学年でも簡単にできます。
③答えを見ながら、正しい答えを書き写す(赤ペンで)
ここからが【直し】です。答えを見ながら、正しい答えを書き写していきます。鉛筆で書いた自分のメモや解答がわからなくならないよう、赤ペンなどを使いましょう。
④どこがどう違っているのか、途中式を正しく書きかえる(赤ペンで)
その後、答えを見ながら、どこがどう違っているのか途中式を正しく書きかえます。ここが学習で最も大切な部分であり、慣れるまでは特にサポートが必要なところです。
- ここは「+」なのに「-」にしちゃったから間違えた
- 式は合っていたのに、くり上がりを忘れる計算ミスをしちゃった
など、間違えた場所に自分で気づけるよう声掛けをしてあげましょう。また、この時に途中式や計算のメモ等を残しておく重要性に気づくチャンスでもあります。
⑤間違った理由など気づいたことがあればメモする(青ペンで)
これは少し難易度が高いので、難しければやらなくてもよいと思いますが、やれればかなり力がつきます。具体例としては、
- こういうタイプの問題でいつも小数点が1つずれてる。たくさん練習しなきゃ。
- いつも割合の式を立てるときに数字が逆になってしまう。明日友達にコツを聞いてみようかな。
などです。自分のためのメモですので、自分の言葉で書くことが大切です。これができれば、自ら考える学習姿勢を日常的にかなり伸ばすことができると思います。
子どもへの教え方
親の場合
親が家庭で子どもに教える場合には、上のやり方を見ながら、宿題などの丸つけと直しを一緒にやってあげるのが良いでしょう。
子どもがこれまで、自分で丸つけも直しもやったことがないのなら、しばらくの間はサポートが必要だと思います。しかし、小学2年生でもこの方法で習慣づけることができましたので、どの学年にも可能だと思います。
慣れるまで丁寧に見てあげれば、あとは自分で進められるようになります。
教員の場合
具体的な指導法としては、上のやり方を丁寧に説明した上で、授業時間内に「自分で」やる練習時間を設定し、自分で丸つけ直しをするやり方そのものについてその場で助言するというやり方がおすすめです。
答えを写してしまうことへの対応
自分で「丸つけ直し」をするために答えを子どもに渡すと、子どもが自分の力でやらずに答えを写してしまうことも考えられます。
自分で丸つけ・直しをするメリットはここまででお伝えした通りですが、答えを写してしまう子にとっては無意味な学習を続けることになってしまうため、対策が必要です。その場合には、
- 親が答えを預かっておき、丸つけのときに子どもに渡す
- 答えは預からないが、細かく様子を見る
- 全てを子どもに任せながら改善を待つ
- 保護者のいるところで学習するようにしてズルしづらくしたりする
などの対応を考えましょう。
それでもダメな場合には、親が丸つけすることも検討します。私は、親が丸つけすることそのものは否定していません。ただし、親が丸つけする場合にはそのメリットをよく考えて行うことが重要です。それについては以下の記事に詳しく書いていますのでお読みください。
最後に(まとめ)
今後、この指導方法に共感する方が増え、子どもが自分で「丸つけ」「直し」をすることが広まっていくといいなと思っています。
この記事をご覧いただいた保護者の皆様、そして教員の方にぜひ実践していただきたいです。
やってみると「意外とできる!」と感じてくれる方が多いですので、お子さまと一緒にまずはチャレンジしてみてください。
今後も、子どもたちが自分で考える力を育むためのよりよい方法を模索し、改善し続けていきたいと思います。