算数・数学の等式で使われる記号である等号(=)は、通常「イコール」と読みますが、小学生への学習指導では、「は」と読むことが多いです。
しかし私は、少なくとも小学校高学年くらいからは「イコール」と読むのが良いと考えています。それは、等号(=)の意味と関係があります。
この記事では、学習塾→中学校教員→小学校教員として算数・数学を専門に指導してきた私の経験から、等号(=)の正しい意味と、小学生でも等号(=)をイコールと読むべきだと考えている理由を解説していきます。
そもそも、等号(=)にはどのような意味があるのか?
そもそも、等号(=)にはどのような意味があるのかを確認しておきましょう。
ズバリ、等号(=)は「=」の両側が等しいことを示す符号です。
例えば、5+3=8という等式で考えてみましょう。これは、「=」の左側の5+3と、右側の8が等しいことを表しています。ややこしく聞こえるかもしれませんが、「5+3の答えが8」だと示しているのではないのです。
別の例でも考えてみましょう。4+3=2+5という等式ではどうでしょうか?「=」の左側と右側の計算をするとどちらも7になるため、この等式は正しいといえます。このとき、「=」は左側の4+3の計算の答えを表す記号ではないことがわかるのではないでしょうか?あくまで、4+3と2+5が等しいということを表しているのです。
教科書ではどのように扱われているのか?
教科書ではどのように扱われているかも確認しておきます。教科書出版会社である「啓林館」のHPには、等号(=)と不等号(>,<)の意味と小学校での指導について以下のように説明しています。
「=」のことを等号といい,「=」の両側の表すものが等しいという関係(相等関係)を表します。また,「>,<」のことを不等号といい,左辺と右辺の値の大小関係を表します。
振興出版社啓林館ホームページ
等号を使って表した式(150=90+60等)を等式といいます。不等号を使って表した式(150<90+70 等)を不等式といいます。ただし,等号や不等号の用語は第3学年の指導内容で,等式や不等式の用語は指導内容ではありません。
また、等号(=)の読み方については、私が調べた中では、指導上の読み方にきまりはありません。私の経験上、小学校ではほとんどの教員が「は」と読み、中学校ではほとんどが「イコール」と読んでいるという印象です。
等号(=)を「イコール」と読むべき2つの理由
私は等号(=)の意味を正しく理解するために、小学生でも「イコール」と読むべきだと考えています。以下で、「イコール」読ませたい理由の1つ1つについて詳しく解説していきます。
理由1:等号(=)は「答えを表す記号」という誤解を減らすため
1+2=3を「1たす2は3」のように、「=」を「は」と読むことが多いです。小学校低学年にとっては、これが最もシンプルでわかりやすい方法だと思います。私も、それについては否定しません。
しかし、高学年になってもずっと等号(=)を「は」と読み続けていると、「=」という符号は「答えを表す符号」であるという誤解が生じる可能性があるのです。
例えば、1+2=3という式で考えた時に、=を「は」と読むと、
1+2「の答えは」3
と誤解してとらえてしまうケースが、小学生に多く見られます。この場合、あくまで正しくは
=ではさまれた「1+2」と「3」が、等しいことを表している
のです。「=」を「イコール」と読むことで、「=」が答えを表す記号であるという誤解を減らすことができます。
読み方自体は大きな問題ではなさそうに思えるかもしれませんが、後々の理解を深めるために重要になってきます。
理由2:等号(=)の理解を、方程式の理解につなげるため
上の例のように、単純な計算だけを扱うのであれば、「=」を「答えを表す記号」だととらえていても特に困ることはありません。しかし、方程式を理解する上では、等号(=)の理解が欠かせません。等号(=)の意味を誤解していると、理解を妨げることになってしまいます。
方程式そのものの学習は中学生から始まりますが、小学生でも⬜︎を使った等式の学習などで、方程式に近い概念を学習します。方程式というは、=の左右(両辺という)に同じ計算をして式を変形させていくことで⬜︎などで表した未知の数を求めていくというものです。
例えば、⬜︎+3=15という簡単な方程式を考えてみましょう。等号=は左右の数が等しいことを表しているので、=の左右に同じ数を足したり引いたりしても、そのバランスは変わらないということが理解できます。
=の左側(左辺)の⬜︎+3から3を引き、=の右側(右辺)の15からも3を引くと、⬜︎+3−3=15−3 つまり、⬜︎=12と変形できます。これを省略して書いた場合に、左辺の+3が右辺に−3となって移動したように見えることから「移項(いこう)」するといいます。実際には、移動しているのではなく、あくまで=の左右に同じ計算をするということが基本です。この繰り返しで式を変形させていくことで方程式を解くことができるのです。
今の説明を式であらわすと以下のようになります。
□+3=15
□+3ー3=15−3
□=12
このように「等号=の意味を正しく理解していること」は正しく式変形する上で非常に重要であり、方程式を正しく理解するために欠かせません。
「イコール」と読むこと自体が目的にならないようにする
ここまで、小学生でも等号=をイコールと読むべきだと考えている理由について書いてきました。
ここで忘れては行けないのが、
あくまで、等号(=)をイコールと読む目的は「等号(=)の意味を正しく理解すること」
だということです。決して「イコール」と読むこと自体が目的ではありません。等号の意味を子どもが正しく理解しないまま、ただ読み方だけを「イコール」とかえても意味がないのです。
この記事が等号(=)の読み方だけでなく、等号(=)の正しい意味を理解することにつながれば嬉しいです。最後までお読みいただきありがとうございました。