小学6年生で学習する「分数のわり算」。その学習では、
6÷\(\displaystyle\frac{3}{4}\)
のように、割る数が分数である計算を扱います。この計算は、
6×\(\displaystyle\frac{4}{3}\)
のように、÷を×に直して、割る数の分数の分子と分母を逆にして(ひっくり返して)計算すると正しい答えを求められます。
この記事では、分数のわり算をそのように計算するのはなぜか?という理由について解説していきます。
前提知識として知っておくこと
ひっくり返してかけることを確認する前に、その説明の前提知識として知っておく必要があることについて確認しておきましょう。特別難しいことではありませんので、安心してください。
約分(分子と分母を同じ数でわっても大きさが変わらない)
なぜひっくり返してかけるのかを理解するためには、基本的な「約分」について理解しておく必要があります。これは小学5年生で習う、基本的なレベルで十分です。
「約分」とは、分子と分母を同じ数でわっても大きさが変わらないという性質を利用して、分数をできるだけ簡単な数にする計算のことです。
例えば、\(\displaystyle\frac{2}{10}\)という分数で考えると、分子と分母を同じ2でわって、
\(\displaystyle\frac{2}{10}\)=\(\displaystyle\frac{1}{5}\)
とすることを約分といいます。この約分の理解は、この後の説明を理解するのに必要なので覚えておいてください。
分数の分子と分母を逆にした数を「逆数」という
分数の分子と分母を逆にした数を「逆数」ということも、確認しておきましょう。例えば、
\(\displaystyle\frac{2}{5}\)の逆数は\(\displaystyle\frac{5}{2}\)
\(\displaystyle\frac{7}{12}\)の逆数は\(\displaystyle\frac{12}{7}\)
\(\displaystyle\frac{1}{4}\)の逆数は4(\(\displaystyle\frac{4}{1}\)なので)
などです。
ちなみに、逆数を正しく説明すると、「元の分数にかけると答えが1になる数」です。上の例で確認してみると、
\(\displaystyle\frac{2}{5}\)×\(\displaystyle\frac{5}{2}\)=1
\(\displaystyle\frac{7}{12}\)×\(\displaystyle\frac{12}{7}\)=1
\(\displaystyle\frac{1}{4}\)×4=1
となります。
わる数とわられる数に同じ数をかけても答えは変わらない
わり算において、わる数とわられる数に同じ数をかけても答えは変わらないことも、この後の説明を理解するために必要です。言葉で説明するとややこしいので、例を挙げて説明します。
例として、24÷3を挙げます。まずは普通に計算すると、
24÷3=8
となります。ここで、24÷3の、わられる数である24と、わる数である3の両方に2をかけてみます。すると、
(24×2)÷(3×2)=48÷6
という式になります。48÷6=8であり、これは24÷3の答えと変わりません。
このように、わり算では、わる数とわられる数に同じ数をかけても答えは変わらないという性質があることは確認しておきましょう。そして、ここでいう同じ数というのは、分数でも構いません。先ほどの24÷3の式のわられる数とわる数に\(\displaystyle\frac{1}{3}\)をかけると、
(24×\(\displaystyle\frac{1}{3}\))÷(3×\(\displaystyle\frac{1}{3}\))=8÷1
となり、これも答えは変わらず8になります。
分数のわり算でひっくり返してかけることの理由(本題)
理解するための前提知識の確認が終わった所で、いよいよ「分数のわり算でひっくり返してかけるのはなぜか?」という本題に入りましょう。
ここでは、例として、
6÷\(\displaystyle\frac{3}{4}\)
を挙げます。この計算について考えていきましょう。
わられる数とわる数に「わる数の逆数」をかける
先程、わる数とわられる数に同じ数をかけても答えは変わらないことを確認しました。つまり、
6÷\(\displaystyle\frac{3}{4}\)
の6と\(\displaystyle\frac{3}{4}\)の両方に同じ数をかけても答えは変わらない、つまり変形が可能ということです。
では、何をかけるのか…ズバリ、わる数の逆数です。
\(\displaystyle\frac{3}{4}\)の逆数は\(\displaystyle\frac{4}{3}\)ですので、
(6×\(\displaystyle\frac{4}{3}\))÷(\(\displaystyle\frac{3}{4}\)×\(\displaystyle\frac{4}{3}\))となります。
逆数をかけた理由はともかく、この式変形自体に問題がないことは確認してください。
約分する
次に、上の式を約分してみましょう。実際の計算で答えを導く際には、すべて約分しますが、今回は説明をわかりやすくするためにわる数のみ約分します。
(6×\(\displaystyle\frac{4}{3}\))÷(\(\displaystyle\frac{3}{4}\)×\(\displaystyle\frac{4}{3}\))=(6×\(\displaystyle\frac{4}{3}\))÷1
となります。
ここで、÷1という計算をしても答えは変わりませんので、÷1の部分は省略することができ、
6×\(\displaystyle\frac{4}{3}\)
となります。
結果として「ひっくり返してかけている」ように見える
ここまでの式変形を、式にまとめてみます。
6÷\(\displaystyle\frac{3}{4}\)
=(6×\(\displaystyle\frac{4}{3}\))÷(\(\displaystyle\frac{3}{4}\)×\(\displaystyle\frac{4}{3}\))
=(6×\(\displaystyle\frac{4}{3}\))÷1
=6×\(\displaystyle\frac{4}{3}\)
このように、結果として÷\(\displaystyle\frac{3}{4}\)の部分が×\(\displaystyle\frac{4}{3}\)に変わったように見えます。
これが、分数のわり算で「ひっくり返してかける」理由です。ちなみに、「ひっくり返してかける」というには正しい説明ではありません。
正しくは、「わる数の逆数をかける」ですので、覚えておきましょう。
算数では「なぜ?」を考えることが大切(まとめ)
ここまで、分数の割り算は、なぜひっくり返してかけるのか?(逆数をかけるのか?)という点について書いてきました。
算数や数学を学んでいく上で、「なぜそうなるのか?」を考えることはとても重要ですし、そこを考えることに算数数学をまなぶ楽しさがあります。この記事の他にも、以下の記事では算数数学に関わる「なぜ?」を取り上げて記事にしていますので是非ご覧ください。
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最後までお読みいただきありがとうございました。