2023年12月27日、文部科学省は「GIGAスクール構想の下での校務DX化チェックリスト」に基づく自己点検調査の結果を公表しました。 この調査は、2023年9月から11月にかけて全国の公立小中学校を対象に行われたものです。
「校務DX化チェックリスト」は、文部科学省が学校のデジタル化や教員の業務改善のために作成したものです。つまり、この調査項目そのものが、学校のデジタル化推進と教員の負担軽減にむけた文部科学省からのメッセージともとれるのです。
そこでこの記事では、学校のデジタル化をどう進めるか?ということについて、文部科学省が作成した「校務DX化チェックリスト」に沿って解説していきます。
文部科学省の「GIGAスクール構想の下での校務DX化チェックリスト」について
文部科学省が実施した「GIGAスクール構想の下での校務DX化チェックリスト」は、以下のようにカテゴリ分けされています。
- 教員と保護者間の連絡のデジタル化
- 教員と児童生徒間の連絡等のデジタル化
- 学校内の連絡のデジタル化
- その他の校務デジタル化
以下はこの4つの分類に沿って、デジタル化をどう進めるかについて、調査項目と結果およびそこから読み取れる具体的な校務のDX化について解説していきます。なお、調査項目は一部抜粋していますのでご了承ください。
この記事内のデータ参照元:文部科学省HP(「GIGAスクール構想の下での校務DX化チェックリスト」に基づく自己点検結果の報告について)
分類1:教員と保護者間の連絡のデジタル化
集金は口座振替やインターネットバンキングで
【調査項目①】「現金徴収ではなく、口座振替、インターネットバンキング等を活用して徴収金の徴収を行っていますか?」という質問に対し、
完全デジタル化・半分以上デジタル化しているという回答は、72.4%でした。
この結果について私は、デジタル化していない学校があることに対して、正直驚きました。
私は過去に現金による集金を経験したことがありますが、かなりの負担でした。デジタル化に慣れてしまった今、当時を振り返ると馬鹿馬鹿しくなるほどの負担だったなと感じています。即デジタル化すべきでしょう。
しかし、システムの構築など、一教員ではどうにもならない部分もあります。今回の調査結果を踏まえて、現場から改善するよう声を上げていくしかないかもしれません。
欠席・遅刻・早退連絡はクラウドサービスを用いる
【調査項目②】の「欠席・遅刻・早退連絡について、クラウドサービスを用い、PC・モバイル端末等から受け付け、学校内で集計していますか?」という質問に対し、
完全デジタル化・半分以上デジタル化しているという回答は、58.5%でした。
新型コロナによって、登校が制限される時期に導入が進んだであろうクラウドサービス。せっかく導入が進んだにもかかわらず、従来の電話連絡や連絡帳による方法に戻ってしまったという話を耳にすることがあります。
従来通りに戻す学校のケースを聞くと、
- 電話で直接声を聞いたほうが、温かみがある
- 連絡帳の方が、細かく状況等が分かって良い
などの理由があるようですが、ここは積極的に業務改善が必要な部分といえるでしょう。特に、朝の登校時に欠席連絡の電話が何件もかかってくると職員が電話の前から離れられず、本来の業務を行うことができません。
決定権はおそらく校長にあるでしょうから、まだデジタル化できていない学校にお勤めの教員の皆さんは、教頭や校長に積極的に要望していくべきでしょう。
保護者へのアンケート等はクラウドを活用する
【調査項目③】保護者へのアンケート等をクラウドサービスを用いて実施・集計していますか?という質問に対し、
完全デジタル化・半分以上デジタル化していると回答したのは51.2%でした。
Googleフォーム等を活用してアンケートを行えば、従来のペーパーで行う場合の、
- 印刷して全校に配付
- 担任が回収
- 1枚ずつ集計して計算
- 結果をデータとしてまとめる
という手順が不要となります。使わない手はないでしょう。51.2%という数字は正直少なすぎると感じました。
また、現場での導入も比較的しやすいと感じています。まずはアンケートを自分自身が作成する立場の場合には、即デジタル化しましょう。デジタル化することについては反対意見もあまり出ないのではないでしょうか。
唯一、反対意見として可能性があるのは、「スマホがない家庭はどうするのか?」などでしょうか…。もしそのような家庭がある場合には、その家庭にだけプリントを配付し、そのデータを代わりに入力すればよいだけでしょう。私が勤務する学校でも導入時には同じような懸念が一部職員からありましたが、実際にやってみると回答できない家庭は1件もありませんでした。
お便り・配布物はクラウドで一斉送信
【調査項目④】学校から保護者へ発信するお便り・配布物等をクラウドサービスを用いて一斉配信していますか?という質問に対して、
完全デジタル化・半分以上デジタル化していると回答したのは33.1%でした。
実は、今まさに私が学校内で推進しているのがこれです。他の職員からの意見として根強くあるのが、
- 紙で配らないと読んでくれないのではないか
- スマホの画面では字が小さくて読みづらいのではないか
などの意見です。それに対する私の意見は、
- それはプリントでも同じことが言えるのではないか
- そもそも、小さくて読みづらくなるほどの文字数で連絡する必要はない
です。実験的に数回デジタル化して配付したことがありますが、今のところ問題は起きていません。それよりも、
- 印刷の必要がない
- 少ない文字数で伝えることを考えた結果、必要な情報を端的に記載するようになった
などのメリットの方が大きいと実感しています。そこを理解できる職員が実際に実践してメリットを共有することで広めていけるのではないかと思います。
分類2:教員と児童生徒間の連絡等のデジタル化
宿題はクラウドサービスやデジタルドリルを活用する
【調査項目⑤⑥】宿題をクラウドサービスやデジタルドリル教材を用いて実施・採点していますか?という質問に対し、
完全デジタル化・半分以上デジタル化していると答えたのは、
- 学期中の場合は14.8%
- 長期休暇中の場合は14.7%
という結果でした。この点については、「少ないから良くない」と単純に言い切れない部分があります。あくまで私個人の意見ですが、
- そもそも宿題は必要か
- 宿題をデジタルで出す必要性はあるのか
という点は考えたいところです。宿題の採点の負担軽減にはなるのかもしれませんが、私は宿題の採点をあえて子どもが自分でやるように指導していますので、個人的には負担になっていません。
ただ、そんな私もデジタルで宿題を出すこともあります。目的や状況に応じて使い分けることが大切です。
分類3:学校内の連絡のデジタル化
職員会議資料等はクラウドサービスで事前に情報共有する
【調査項目⑧】職員会議等における検討事項について、クラウドサービスを用いて事前に情報共有し、あらかじめ意見を求めていますか?の質問に対して、
毎回または一部(半分以上)求めていると回答したのは29.7%でした。
これは、教育現場の大きな課題の一つであると感じています。職員会議は「会議」であり本来必要な話し合いをすべき機会だと思うのですが、私はこれまで
- 読めばわかる資料を担当者が声に出して読み上げ、
- 他の職員は、そこでその資料を初めて目にし、
- 特に意見が出されることなく次の議題へ
という職員会議を少なからず経験してきました。さすがに最近ではこのような会議は減りましたが、多少は残っていることも残念ながら事実です。事前にクラウドなどで情報を共有し、会議の場では必要な点についてじっくり時間をかけて話し合うほうが有意義です。
これは、1人1人の意識次第ですぐにでも取り組めることだと思います。
状況により職員会議へオンライン参加できるようにする
【調査項目⑭】職員会議等をハイブリッド(対面・オンライン)で実施していますか?という質問に対し、
完全ハイブリッド化・半分以上ハイブリッド化していると回答したのは3.9%でした。
これは一見、ハードルが高いように思われるかもしれませんが意外とすぐに行えます。
私は以前、職員会議当日に急な都合で校外へ出る用事がありました。用事を済ませて学校に戻廊下とも考えましたが、校長が認めてくれたためオンラインで会議に参加しました。
特に問題なく、スムーズに会議に参加できました。
様々な働き方の選択肢が広がるという意味で、どんどん提案していくとよいのではないでしょうか。なお、これを行うには、会議資料がクラウド等で閲覧できるようになっている必要はあると思います。
分類4:その他の校務のデジタル化
押印や署名を求める書類はできる限り廃止していく
【調査項目③】保護者・外部とのやりとりで押印・署名が必要な書類はありますか?との質問に対し、
ないと回答したのは12.8%でした。
押印やサインは、根拠なく「これまで通り」に求めてしまいがちですが、どんどん廃止していくべきでしょう。文部化科学省から押印や署名を廃止していくよう通知が来ていますから、それを根拠に無くしていくべきでしょう。
すぐできることは、自分の担当する係の文書で押印を求めるものは、見つけ次第廃止していくということでしょうか。気にしていると、意外に多くの箇所が見つかります。
外部から指定されたとき以外はFAXを使用しない
【調査項目④】業務にFAXを使用していますか?との質問に対して、
使用していないと回答したのは4.1%でした。ほとんどの学校が今でもFAXを使用していることになります。
これは、多くのメディアで取り上げられている部分です。たしかにFAX文化はあると思います。すぐにでもメールに置き換えるべきです。
教員個人にできることは次の3つだと思います。
- 少なくとも自分が外部と連絡を取る際には、FAXでなくメールを使う
- 返答を求める際には、メールで返答するよう依頼する
- 「メール見てください」のFAXは絶対しない(たまに来ますが、本当に不要です。)
しかし、「FAXで送ってください」といわれた場合には仕方ありません。地元の教材屋に注文する際、そのようなケースが多いと感じていますが皆さんの学校ではどうでしょうか?
教材屋自体がFAX文化から抜け出せていないのか、FAX文化の学校現場に教材屋が合わせているのか、どちらかはわかりません。いずれにしても、
FAXを使わないで済む場合には極力使わないということを徹底していくしかないと思います。
生成AIの活用を積極的に模索していく
【調査項目⑤】「初等中等教育段階における生成AIの利用に関する暫定的なガイドライン」に基づき生成AIを校務で活用していますか?との質問に対し、
ほぼ全員もしくは半分以上の職員が活用していると回答したのは1.2%でした。
児童生徒に対して生成AIをどのように活用するかという点は、じっくり議論していく必要があると思います。しかし、この調査項目のように「校務」での活用は、今後の業務改善の鍵となるのではないでしょうか?
- 教科担任制等の時間割作成
- 全校の特別教室割り振り
- 教員の持ち時数計算
など、活用できそうなことはたくさんあります。私自身も、まだあまり活用できていないので、これからどんどん活用していきたいと思います。
まとめ
校務のDX化は、教員の働き方改革を考えていく上で切り離せない問題です。現場の教員一人ひとりの意識を高めていくことによって、学校教育をより良いものにしていくことが大切でしょう。
とにかく大切なのは、できることから始めるということです。以下の記事では、私が実践している方法について買いています。
これをお読みの教員の皆さんには、ぜひ「それぞれの立場で」「それぞれの能力に合わせて」明日から取り組めることから始めてほしいと思います。共に学校のデジタル化と業務改善を進めていきましょう。
最後までお読みいただきありがとうございました。