教員不足と採用試験の倍率低下はなぜか?データでわかりやすく解説

教員採用試験や教員免許

深刻な教員不足が問題視されています。また、教育採用試験の倍率低下もとても深刻です。

しかし、そもそもなぜ教員不足や採用試験の倍率低下が起こっているのでしょうか?この記事では、データを踏まえてわかりやすく解説し、私なりの改善策も書いていきます。

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教員不足と競争率低下の現状

令和4年1月に文部科学省が発表した『「教員不足」についての実態調査』によると、令和3(2021)年度の不足教員数は2558人です(始業日時点)。(参考 文部科学省HP『令和4年1月「教員不足」についての実態調査』)

また、教員採用試験の競争率低下も深刻です。令和4年度の教員採用試験の倍率は、過去最低の3.7倍にまで低下しています。特に小学校については減少傾向が続いており、深刻な状況です。

引用元:「文部科学省HP『令和4年度(令和3年度実施)公立学校教員採用選考試験の実施状況のポイント』」
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新卒の受験数はほとんど変わっていない

上記データからは、採用者数の増加受験者数の低下が競争率低下に繋がっていると考えられそうです。採用者数の増加については、定年による退職者数の増加によるものだと予想できます。受験者数の低下についてさらに調べてみると、以下の資料が見つかりました。

引用元:「文部科学省HP『令和4年度(令和3年度実施)公立学校教員採用選考試験の実施状況のポイント』」

この資料を見ると、

いわゆる新卒者の受験数はほとんど変わっていない

ことが読み取れます。これは私自身、調べてみるまで知らなかった意外なデータでした。「教員の人気低下」という一言で済ませず、冷静に考える必要があると改めて思います。

原因は「既卒者」の受験数低下

注目したいのは、「既卒者数」の減少です。ここでいう既卒者数というのは、正規採用ではなく講師として働いている教員の方や、一般の社会人の方の受験者ということになります。「既卒者」の受験者数の減少が著しく、平成20年から比較して1万人以上も受験者が減少していることがわかります。

なぜ、「既卒者」の受験数が減っているのか

では、なぜ「既卒者」の受験者数が減っているのか、上記の資料をもとに考察していきます。資料から考察する既卒者の受験数低下は、

  • 競争率が高かったとき講師として受験に挑戦していた方々が、すでに採用された
  • 教員を目指していた既卒者が、教職以外の道を選んだ
  • 教員免許を持つ一般の社会人が、何らかの理由で教職を目指さなくなった

などが原因として考えられるのではないでしょうか。

教員免許を持っているのに教職に就いていない方々のことを「ペーパーティーチャー」と呼びますが、2023年末の文部科学省による5億円の補正予算というのは、この方々へのアプローチだと考えられます。データから読み取れる、教員採用試験受験者における「既卒者数」の減少という課題に対する対策ということなのでしょう。

データ上、確かにその方々へのアプローチは必要なのかもしれません。しかし、それと同時に現場の改善も必要です。

まずは「現場」を変えるべき

教員不足を根本的に解決するには、現場の改善が大切です。どれだけ予算を使って、教員という仕事の魅力をアピールしても、実態が伴わないのでは意味がありません。

教員という仕事は、本当にやりがいがある素晴らしい仕事です。ですから私は胸を張って教員という仕事をおすすめします。しかし、やりがいだけでは人は集まりません。「現場」の改善なくして教員不足の改善はありませんし、改善がないということは何より、子どもたちの成長に影響します。

以下は、私が考える「現場の改善案」です。現実的かどうかは関係なく、好き勝手に書いていますので、予めご了承ください。

給与増で優秀な人材の確保を

教員というのは、未来ある子どもたちの成長を担う責任ある仕事です。誰にでもできる仕事ではないのです。だからこそ、「教員免許状」が存在するのです。本来、もっと優秀な人材が集まるべき仕事だと思うのです。

では、優秀な人材を集めるにはどうするか。私は「給与の増加」が最もシンプルで効果的な対策だと思います。給与の高い仕事には希望者が集まります。いわゆる給特法の改正などが議論され始めていますが、どのような形であれ、給与の増加は是非やってほしいなと思います。

業務削減による教員の働き方改革

必要な業務の精選も必要です。教員は(というか、他の業界もそうなのかもしれませんが)、余計な業務がかなり多いなと感じます。教員の業務の基本は「授業」だと思うのですが、「忙しくて授業準備ができない」なんてことが日常的に起こります。これでは、良い授業ができません。国や自治体レベルでの対策はもちろん、我々教員自身でも改善を考えていかなければなりません。以下の記事では、個人でできる取り組みについて買いています。

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小・中における部活動の廃止(大会の廃止)

部活動の廃止については、すでに進められていますが、まだまだ進んでいない部分が多いと思います。これまで当たり前のように行なってきた慣習を変えることは簡単なことではありません。部活動は、活動時間が教員の勤務時間外に設定されているなど、教員が業務として行うには限界がある業務です。私自身、恥ずかしながら部活動顧問をやりたくて教職を選んだような所はありますし、部活動の良さもよく理解しているつもりです。しかし、教員の仕事は部活ではありません。今は、部活動には反対の立場です。

また、部活動の地域移行がなかなか進まない理由として、現場で私が強く思うのは「大会がなくならないと、部活の縮小は進まない」ということです。大会そのものがなくならないと、保護者からの要望など、現場では廃止の判断をなかなかしにくいものです。最近聞いて驚いたのは、地域移行が順調に進み始めたクラブチームが「学校単位でないと大会には出られない」という理由で大会参加を拒まれたという話です。ここについてはもっと自治体レベルで大会をなくすとか、大会の主催を地域のスポーツ団体にするなど、上が動かないことにはどうにもならない部分です。

部活動がなくなることによるデメリットを心配する声もありますが、無くすことで地域のスポーツクラブ等が発展するという考え方もあります。私は小中学生時代、学校の部活動ではなく地域のクラブでスポーツをやってきたため、ここに対する抵抗は少ないのかもしれません。

手遅れになる前に、しっかりとした対策を期待したい

教員不足への対策は、手遅れになる前に(もう手遅れだという意見も聞きますが)、しっかりとした対策をしてもらいたいものです。今回の5億円の補正予算だけでは、たとえ効果があったとしても一時的なもので、抜本的な解決にはなりません。

教育予算の増額は、すぐに結果の出ない長期的な投資です。国には、子どもたちの未来への投資を正しい方向で行ってもらいたいと思います。そして、我々教員にも「現場で」できることがあります。それぞれの立場で、子どもたちの未来のために行動すべきなのではないでしょうか。

最後までお読みいただきありがとうございました。

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