通知表は必要?目的は?教育効果と教員の業務改善を両立させる方法

教員の働き方や指導法

小中学校で学期末に配付される「通知表」の作成は、教員にとって大きな負担です。

通知表作成時期に土日も出勤して何とか間に合わせる…という教員もいます。しかしこれは、教員の多忙化や、それによる教員志願者減少などが不安視される中、当然良いこととは言えません。

そんな中、私の勤務校では、通知表作成における業務改善と、児童生徒、保護者からの好評の声を両立させることができました。私は、研究主任、情報主任の立場から、改善に向けて中心的に関わっていました。

この記事では、そんな私の経験を生かして、教員の方向けに「教育効果」と「業務改善」を両立させる通知表のつくり方について解説していきます。

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通知表の配付に法的根拠はない

まず確認しておきたい点としては、通知表の配付に法的根拠はないという点です。

学籍情報等を記録する「指導要録」は作成が義務付けられていますが、通知表はそうではありません。

あくまで各学校が任意で作成しているものであるということは前提として押さえておきたいところです。実際、通知表を配付しない学校もあります。

通知表をなぜ配付するのか(目的)

では、通知表を配付する場合、なぜ作成・配付するのでしょうか?通知表作成の「教育効果」と「業務改善」を考える上で、目的を確認することは非常に大切です。

しかし、残念ながら目的を職員で共有できておらず、例年通りに何となく作成・配付してしまっているケースもあるのではないかと思います。これでは、通知表を渡すことによる教育効果は期待できず、業務改善の糸口もつかめません。

私が考える通知表を配付する目的は次の2点です。

子どもが、自分の学習や生活をふりかえり、今後の成長につなげること

1つ目の目的は、「子どもが、自分の学習や生活をふりかえり、今後の成長につなげること」です。

学校は子どもを成長させる場ですから、通知表は子どもの成長につながる場である必要があるでしょう。そういった意味で通知表というのは、学期末という節目において、子ども自身が、学習や生活面での成果と課題を確認できる場となります。

子どもの学習と生活について、学校・保護者・本人の3者が共有することで、今後の支援につなげること

2つ目の目的は、「子どもの学習と生活について、学校・保護者・本人の3者が共有することで、今後の支援につなげること」です。

通知表は、子どもだけでなく、保護者に向けても記載するものです。学校が記載した1人1人の学習と生活面における評価を、本人だけでなく保護者にも共有する意味があります。

つまり、学校・保護者・本人の3者によって共有するという目的があります。

業務改善につながる通知表にするには

目的を職員で共有する

そもそもなぜ通知表を配付するのか?

これを職員で共有することが大切でしょう?前述した目的は、私(と私の勤務校)の考えですが、目的は様々あっていいと思います。

大切なのは、職員自身が目的を明確にして作成することです。そのために、職員での目的の共有が欠かせません。議論の結果、「通知表を配付しない」と決めても良いわけです。私の勤務校でも、通知表廃止まで視野に入れつつ、議論を進めました。

目的を再確認し、配付すると決めたのなら、以降はその目的に沿った通知表作成を考えていきます。

校務支援システムで作成する

作成が決まったら、次はどのように作成するかを考えます。

最近までは、学校独自のエクセルファイルなどを使っている学校もありましたが、校務支援システムを導入している学校では、それを活用することを第1の選択肢としましょう。

校務支援システムを活用するメリットとしては、

  • 日頃の出席簿とリンクすることで、欠席日数が自動的に反映される
  • セキュリティの向上
  • 学校独自のエクセルファイル等作成の負担がない
  • 業者によるサポートシステムがしっかりしている(業者によるかもしれません)

等が考えられます。

導入初年度には「新しいシステムにすることは不安…」という職員も一定数いますが、導入後は「こんなに簡単になるなんて!」という肯定的な感想を持つ方が多いです。ここは、職員個人では難しいかもしれませんが、しっかりと情報主任や教頭、校長などに声を上げていく必要があります。

指導要録と重複する項目をベースにする

通知表をどのようなものにするかを考えていく上でベースにしたいのは、

児童生徒指導要録(通称:指導要録)と重複する項目をベースにすること

です。作成義務のない通知表と違い、指導要録は全ての小中学校で作成・保存義務があります。一言でいえば、年度末にはどうせ作成しなければいけないものなのです。通知表に記載する内容が指導要録と同じ(もしくは似ている)のならば、通知表作成時に作成したものを、そのまま指導要録にコピーすれば通知表作成の負担は実質最小限となります。わざわざ2回作成する必要はありません。

指導要録(全国統一様式)で記載する項目は、大まかに次のようなものがあります。

  • 教科の3観点(知識技能・思考判断表現・主体的態度)の3段階評価
  • 外国語活動の所見(3,4年生)
  • 総合的な学習の時間の所見(3年生以上)
  • 出欠席の記録
  • 特別の教科「道徳」の記録
  • 総合所見(担任コメント)

これらは指導要録作成時に記載することになるので、通知表作成のベースと考えて良いでしょう。

所見は最小限に

コメントでの評価項目は、作成に時間がかかります。一方で、言葉での評価であるため、子どもや保護者にとってわかりやすいという利点もあります…。

どの程度の記載にするかは各学校で迷うところではあると思いますが、その辺りを考えた上でも所見は最小限の分量で十分だと思います。

具体的には、前述「指導要録」の所見の項目について、毎学期ではなく1~3学期のうちどこか1回だけ記載するという方法がおススメです。

時間をかけて毎学期にたくさんコメントを書くことは効果もありますが、負担も大きいです。教員の業務改善が進めば、教員が余裕をもって様々な業務にあたることができ、結果として子どもたちへの教育効果も高まると考えます。

そして、負担をかけて書く以外にも、効果を高める方法はあります。

言葉を添えて渡す

負担を少なくしつつ、教育効果を高める方法として考えたのは、

しっかりと言葉を添えて渡す

ことです。これまで毎学期所見で書いていたような内容を、言葉で直接伝えるという方法です。

我々教員は、子どもたちのことを日頃からよく見ていますから、必ずしもかしこまって文章で伝える必要はなく、子どもの目を見て丁寧に伝えてあげることが、子どもにとっても良いのではないでしょうか?また、面談などで保護者に直接伝えながら渡すという方法もあります。

また、教科担任制を行っている場合などには、伝えたいことを事前に担任に伝えておいて代わりに伝えてもらったり、必要に応じて直接声をかけたりすれば良いでしょう。

単に負担を軽減するだけでなく、むしろ負担を軽減しつつ教育効果を高めることにもつながるのではないでしょうか?

通知表の見方を丁寧に説明する

そもそも「通知表をどのように見ればよいのか」ということを、丁寧に説明することも大切です。

我々教員が当たり前のように使っている言葉も、保護者にとっては分かりにくいものもあるでしょう。

  • 「知識・技能」とはどんな評価なのか?
  • 「思考力・判断力・表現力」は何で評価しているのか?
  • 「主体的」とは、日頃の授業などでのどんな姿を指すのか?
  • この枠では、どのような評価が書かれているのか?

など、通知表の見方を丁寧に説明することで、子どもや保護者にとってわかりやすくなります。

私の勤務校では「通知表の見方」というプリントを作成し、通知表配付時に一緒に配付するようにしています。また、必要に応じて保護者面談の際に補足的に説明を加えるなど、丁寧な配付を心がけています。

「通知表の見方」を作成することで、「目的の確認」や「この項目はどのような評価なのか?」などを教員も確認ができ、教員側のメリットも感じています。

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教員の自己満足ではいけない

ここまで小中学校における「業務改善」と「教育効果」を両立させる方法について書いてきました。

「教員の働き方改革」は、一見教員側の都合だけを考えているようにも感じるのかもしれませんが、業務改善によってむしろ子どもたちのためにもなると思うのです。それについては、以下のnote記事で詳しく書いていますので、もしよろしければお読みください。

大切なのは、「たくさんやってあげた」「これだけ時間をかけた」という自己満足的仕事に気づき、本当に子どもたちにとって必要なことを支援していくような業務改善を進めていくことなのではないでしょうか?

「通知表」の在り方を考え直す上で、この記事が少しでもお役に立てたなら幸いです。

最後までお読みいただきありがとうございました。

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