教員の超過勤務が問題視され、働き方改革が叫ばれています。この問題は、教員自身の心身の健康や、ブラックなイメージから働き手がいなくなってしまうのではないかという『教員視点』で語られることが多いですが、私は、働き方改革は、『子ども視点』から見ても必要だと思っています。この記事では、
- 働き方改革が子どものためになる理由
- 教育の質を高めるための働き方改革の進め方
について書いていきます。
働き方改革が子どものためになる理由
子どもが自分で活動する機会の増加
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教員という仕事をしていると、子どもに「やってあげる」という意識が強くなりがちです。発達段階に応じて、当然必要な支援もたくさんあります。しかし、必要以上にやってあげすぎてしまうのは子どもが自分で活動する機会を奪うことになりかねません。
過度な支援により教員の業務は増え、子どもは成長の場を失う
という本末転倒な状況が起きてしまいます。
教員が「働き方改革」を進めていくことで、適切に子どもが自分で活動する機会を増加させていくことが可能となります。
丸つけ直しを子どもが自分でやるようにすることはその一例です。以下の記事に詳しく書いていますので、ぜひお読みください。
![]() ![]() | 丸つけ直しは自分でやる!子どもの学習効果を高める宿題の取り組み方 |
授業準備時間の確保により、授業の質が向上する
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教員の仕事の中心は、本来「授業」です。現に、子どもたちが学校で過ごす時間の大半は授業です。
しかし、教員の業務は授業以外にも多岐に渡り、肝心な授業準備の時間を十分に確保できないという矛盾が生じます。
働き方改革によって業務全体が削減されることで、本来一番重要である「授業」に教員が時間を割くことができ、授業の質が向上されると考えられます。
働き方改革に向けて個人で取り組めることについては、以下の記事で詳しく解説しています。
![]() | 【教員の働き方改革】明日からすぐにできる個人の取り組み7選 |
本質的な授業提供につながる
授業準備は、ただ時間をかければ良いという訳ではありません。授業準備にダラダラと時間をかけていると、実際の授業でもメリハリのない授業になってしまいがちです。演習プリントの作成に長時間を費やしたからといって、それが必ず良い授業につながるかというとそうでもありません。
「働き方改革」という視点で短時間で授業準備を行おうとした時に重要なのは、
- その授業の目的(ねらい)は何か?
- そのために子どもにどんな活動をさせたいか
- そのための「問い(問題)」として何を子どもに投げかけるか
の3点です。この構造の部分さえしっかりしていれば、基本的に資料は教科書や学年で購入しているドリルなどで十分でしょう。
「働き方改革」という切り口で授業準備時間短縮を考えることで、教員が授業準備の本質をより捉えられるようになり、それが子どものためにもつながると考えられます。
教育の質を高めるための働き方改革の進め方
教員の仕事には「終わりがない」ことを自覚する
教員としての仕事は一言で言って、「終わりがない」と思います。まずはそのことを教員が自覚することが大切です。
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子どもの出欠席処理や会計業務など、やることが明確な業務もある一方、学級の活動や授業準備など、ここまでやれば良いというラインが明確ではない業務も多いです。まずは、この構造を理解するべきではないでしょうか。
例えば授業準備は「教科書のどの内容を扱うか」から始まり、導入で興味を引くためのパワポ資料や具体物を用意し、学習効果を高めるためのワークシートを作成して印刷し、黒板に示すための掲示物を用意してから練習問題のプリントを用意して…など、自分で「ここまで」と割り切らない限り、続けようと思えば永遠に続けられてしまうこともあります。
そしてそれは、「子どもたちのため」という名目で行われ、時間をかければかけるほど良い授業ができるという錯覚を生みます。しかし、実際にはそうではありません。
本質的な授業構成を考えることで、授業準備を短時間にする
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私自身、一つ一つの授業準備に長い時間をかけ、そのこと自体に「子どものために頑張った!」と満足感を感じることもかつてはありました。
しかし、それだけ準備しても上手くいかない授業になることはありますし、準備不足で臨んだにもかかわらず、とても盛り上がって子どもたちが深く思考する良い授業ができることもあります。
だから、単に時間をかけるのではなく、本質的に授業構成を考えていく必要があると感じています。そう考えるようになってからは、授業準備にかける時間は短くなりましたが、授業での子どもの思考場面はむしろ高まっているように感じます。
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必要に応じて時間をかけて授業準備することも大切ですが日常の授業では、本質的な授業構成を考えることで、授業準備を短時間にすることが大切でしょう。
「自己満足仕事」を自覚し、無くす
「子どものために、これだけやってあげた」という「自己満足仕事」を自覚し、無くしていくべきだと、強く思います。
具体的には、
- 毎週出すと自分ルールで決めた「学級通信」
- 市販のもので代用可能にもかかわらず作成する、自作の問題プリント
- 目的が明確でないままに追い求める教室の掲示物作成
などが考えられます。
自己満足仕事を自覚し、無くすためには、目的や意図を明確にする必要があります。そのため日頃から活動の目的や意図を考えるようになり、教育の質向上にもつながると考えられます。
まとめ
もちろん、楽して適当にやればいいという訳ではありません。子どもにとって必要な支援を、適切に過不足なく行なっていくことは、言葉で言うより難しいと思います。
そこを日々見極め、働き方改革を「自分のため」だけでなく「子どものため」ととらえて業務改善していこうとする意識が、我々教員に必要なのではないでしょうか?