今回の記事では、元ゴールドマン・サックス勤務で、投資家、アスリートの田中渓(たなかけい)さん著『億までの人 億からの人』の内容について紹介します。
タイトルや田中さんの経歴から、一見、教員の業務には関係ない内容だと思われるかもしれません。
しかし、私はむしろ「時間の使い方」「習慣」「意思決定」「学び方」など、教員だからこそ読む価値があるだと感じました。
そこで今回は、「教員の業務効率化」という視点から、私が特に参考になった考え方を紹介します。
田中渓著『億までの人 億からの人 ゴールドマン・サックス勤続17年の投資家が明かす「兆人」のマインド』
まずは、書籍について簡単に紹介します。
今回ご紹介するのは、田中渓(たなか けい)さんの著書『億までの人 億からの人 ゴールドマン・サックス勤続17年の投資家が明かす「兆人」のマインド』です。

著者の田中渓さんは、外資系金融大手のゴールドマン・サックス証券で17年間もの長きにわたり投資の最前線で活躍し、現在も投資家として活躍するマネーの超プロフェッショナル。
その肩書や、本のタイトルからお金や資産形成についての内容が中心の本だとイメージする方が多いかもしれません。
もちろん、実際に金融リテラシーや投資についての話も出てきますが、私が読んでいて特に印象に残ったのは、むしろ「時間の使い方」「習慣」「意思決定」「学び方」といった部分でした。
そして、それらは教員の仕事にもかなり通じるものがあると感じました。
24時間の使い方を見える化して棚卸しする
まず大切なのは、自分がどのように時間を使っているのかを把握することです。
本書の中では、24時間の使い方を棚卸しして見える化するという考え方が紹介されています。

具体的には、毎日24時間の時間の使い方を1週間分すべて書き出し、その後「削れない時間」と「削れる時間」に分類します。この中で睡眠は絶対に「削れない時間」とします。
このとき、意識すべきこととして田中さんが挙げているのが以下の2つです。
1つは、「削れない時間」に「ながら」でできないか考えることです。私は、もともと家事をしながらポッドキャストを聴くということをしていましたが、本書を参考にしてお風呂掃除と歯磨きの時間に軽く筋トレをするようになりました。
もう1つは、「削れる時間」を迎えてしまった際、トリガーとして反射的に置き換えるということです。私は、スマホをダラダラといじってしまいそうになったときに、書籍を読むのに置き換えることにしました。
これらのことは、業務効率化には関係のないことかもしれませんが、働きながら充実した人生を送っていく上で重要なことです。
日々の忙しさに追われるだけより、忙しさの中にも充実感をもって過ごしている方が教員として魅力があると感じるのは私だけでしょうか?
日々の充実感を高めるために、「なんとなく忙しい」という感覚だけで仕事をするのではなく、自分が何に時間を使っているのかを一度見える化してみることには意味があると思います。
「緊急ではないけれど重要なこと」に時間を使う
本書で紹介されている、時間の使い方を考える上でもう一つ大切なことが、緊急性は低く、重要性の高いことに時間を使うということです。
教員に限らず、仕事をしている上では、どうしても「今日までにやらなければならないこと」「今やるべきこと」に追われます。

教員でいえば、
- 緊急の生徒指導
- 緊急の保護者対応
- 締め切り間近の外部向けの資料づくり
- 明日の授業準備
などでしょうか。こうした仕事は、緊急性が高く重要性も高い仕事といえるでしょう。
では、緊急性が低く、重要性が高い仕事とは一体何でしょうか?
- 授業についてじっくり教材研究する
- 新しい指導法について学ぶ
- 長期的にみて子どもの成長を促す活動を計画する
- 自分自身の専門性を高め、授業力を向上させる
などが考えられます。これらは、今日やらなくてもすぐに困るわけではないため、ついつい後回しにしがちです。
しかし、長い目で見れば、こうした「緊急性が低く、重要性が高い」仕事こそ、教員として本質的に重要だと私は思います。
だからこそ、業務効率化によって生み出した時間を、こうした重要な活動に使うことが大切だと思います。本書からは、そんなことを改めて考えさせられました。
「習慣化」は、業務効率化の強い味方
本書では、時間の使い方において「習慣化」が非常に重要であるという考え方が紹介されています。
これは、私自身かなり共感した部分です。
例えば、
- 電車に乗ったら英語アプリを開く
- 家事をするときはニュース系のポッドキャストを聴く
のように、特定の行動とやりたい行動をセットにして習慣化してしまうと、「何をしようか」と毎回考える必要がありません。
新たに「時間」をつくりだすのではなく、もともとの行動にやりたい行動を紐づけていくという考え方です。これは、教員の業務効率化を考えるうえでも参考になる考え方だと思います。
私は元々、通勤時間をポッドキャストを聴く時間として習慣化し、インプットの時間を確保してきました。以下の記事で、教員の方におすすめの番組を紹介しています。(田中渓さんが出演する番組も紹介しています。)

それに加えて、私は本書をきっかけに、
- 子どもの寝かしつけで一緒にうたた寝してしまう時間を、読書の時間に
- 歯を磨く時間と、風呂掃除のお湯を抜く時間を短時間の筋トレの時間に
- ダラダラスマホをいじってしまう時間を読書の時間に
それぞれ置き換えることにしました。一つ一つは短時間でも、積み上がっていくとかなりの時間になります。意識することで、これまでいかに時間を無駄にしていたかを実感できました。
「完璧にしてから」ではなく、まず動く
本書で紹介されているものとして、個人的に教員の仕事と特に相性がいいと感じたのが、80/20の法則(パレートの法則)に関する考え方です。
これは、「仕事の成果の8割は、全作業時間のうちの2割の時間で達成される」という法則です。
田中渓さんは、富裕層でもビジネスパーソンでも、稼ぐ人はいつでも「80/20の法則」を意識しているといいます。

日々の仕事でも、全体の8割の準備が済んだら、残りの2割を仕上げて10割にしてから次の段階に駒を進めるのではなく、8割の状態で次に行こうと決め、まず先に進めることを優先していきます。
8割のものを10割にする作業は、8割の時間がかかることも多いため、スピード感を優先して見切り発車で進めていきます。
この考え方は、教員の仕事でも大切だと思います。私が、以下の記事で紹介している業務効率化の考え方ともとても近いと感じています。

例えば、授業準備をするとき。もちろん、子どもたちのことを考えて、より良い授業をつくろうとすることは大切です。しかし、1時間の授業のために何時間も何時間も準備を続けていたら、他の仕事をする時間がなくなってしまいます。
資料や教材を「完璧な状態」にしてから使おうとするのではなく、まずはある程度の形までつくって実際に使ってみる。そして、実践した結果をもとに改善していく。その方が、結果として良いものになることもあります。
重要なのは、「どこに時間をかけるべきなのか」を判断すること。すべての仕事に100%の力を注ぐのではなく、力を注ぐべきところを見極める。これが、業務効率化の本質の一つなのではないでしょうか。
これまでは何となく体感していたことが、本書によって「80/20の法則(パレートの法則)」として理論化された気がしています。
習慣化やルーティン化で「意思決定」を減らす
本書の中では、人は日々非常に多くの意思決定をしているという話も出てきます。選択肢が多ければ多いほど、意思決定にエネルギーを使います。
これも教員の仕事に当てはまると思います。
- 今日は何から仕事をするか
- この仕事はいつやるか
- この資料はどう作るか
- この授業ではどんな教材を使うか
- この子にはどう声をかけるか
こうした判断を一つひとつ積み重ねています。
だからこそ、
- 習慣化できることは習慣化する
- ルーティン化できることはルーティン化する
- タスクを見える化して、優先順位を決めておく
そうすることで、「その場で考えること」を減らすことができます。私がスケジュール管理やタスク管理を大切にしているのも、単に予定を忘れないためだけではありません。「次に何をしよう?」と考える時間を減らすためでもあります。
教員のスケジュール管理については、以下の記事をご覧ください。

効率化した時間を「学び」に投資する
ここまで紹介してきた内容を考えると、業務効率化の目的が少し見えてきます。
業務効率化というと、単に
- 早く帰る
- 仕事を減らす
- 楽をする
といったイメージをもつ人もいるかもしれません。もちろん、それも大切です。しかし、私はそれだけではないと思っています。
生み出した時間を、自分にとって本当に大切なことに使う。
これが業務効率化の先の目的なのではないでしょうか。教員に限らず、その「大切なこと」の一つが学びだと思います。
私自身、読書やポッドキャストなどを通して、日々さまざまなことを学んでいます。教育に関することだけではありません。ビジネス、経済、社会、歴史など、教育とは直接関係のない分野からも、多くのことを学んでいます。

そうした学びが、結果的に授業や学級経営、仕事の進め方など教員としての自分に生きてくることがあります。
本書で印象的だったのが、「学ぶ」は「まねぶ」という考え方です。
良いと思ったものを、自分の中にひな型としてたくさん持っておく。すべてを自分でゼロから考える必要はありません。これは教員にも非常に重要なことだと思います。
- この先生の授業のここがいい
- この仕事の進め方は効率的だ
- この考え方は自分にも使えそうだ
そう思ったものを取り入れて自分の引き出しを増やしていくことも、教師としての成長につながるのではないでしょうか。

また、教員に余裕が生まれることは、子どもたちにとっても大切なことだと考えています。
いつも忙しそうにしている教師と、いつも心に余裕をもって子どもたちと関わる教師…。もし自分が子どもの立場だったら、どちらの教師に教わりたいでしょうか。もちろん、教員の仕事には、どうしても時間をかけなければならない場面があります。だからこそ、何でもかんでも効率化すればいいということではありません。
むしろ、時間をかけるべきところに時間をかけるために、効率化できるところを効率化する。
本書を読んで、この考え方を改めて強く意識しました。
まとめ ー時間は増やせない、時間の使い方を変えるー
1日は誰にとっても24時間です。だからこそ重要なのは、時間そのものを増やすことではなく、限られた時間をどこに使うかを考えることなのだと思います。
本書から私が教員の業務効率化という視点で参考になった点をまとめます。
- 24時間の使い方を見える化して棚卸しする
- 「緊急ではないけれど重要なこと」に時間を使う
- 「習慣化」は、業務効率化の強い味方
- 「完璧にしてから」ではなく、まず動く
- 習慣化やルーティン化で「意思決定」を減らす
- 効率化した時間を「学び」に投資する
本書は、私にとっては、時間の使い方や仕事への向き合い方、そして学び続けることについて考えさせられる一冊でした。
教員の仕事は、とにかくやることが多い仕事です。だからこそ、「ただ頑張る」だけではなく、「どうすれば効率よくできるか」を考えることが必要です。
そして、そこで生まれた時間を、子どもたちと向き合う時間や、授業について考える時間、自分自身が学ぶ時間に使っていく。
そんな働き方が重要なのではないでしょうか。
最後までお読みいただきありがとうございました。
