読書は社会人が学ぶ上で、最もオーソドックスな手段といえるかもしれません。
教員の方は、授業や学級経営を学ぶときに、いわゆる「教育書」を手にとることが多いと思います。しかし、私は「ビジネス書」を読むことが多いです。そして、教員としての仕事に役立てられていると実感しています。
この記事では、そんな私がこれまでに実際に読んだ本の中から、教員の方におすすめの仕事に役立つビジネス書を紹介していきます。
ビジネス書は教員にどのように役立つのか
教員は、いわゆる「教育書」を手にとる方が多いと思います。私自身も、ビジネス書だけでなく教育書も読みます。授業や学級経営、授業づくりなど、専門的な学びを深めたい場合には「教育書」が適しています。念のため言っておきますが、私は「教育書」を否定している訳ではありません。
私が「教育書」だけでなく「ビジネス書」も読むことにしている理由は、教育の世界から一歩引いた広い視野から新たな知見が得られ、学びとなる実感があるからです。そして、それらは教員としての仕事に役立っていると感じます。ビジネス書だからといって教員の仕事とかけ離れているとは全く思いません。
学校という場は、意識していないとどんどん閉鎖的な閉じられた空間になっていく気がします。
「教員は社会を知らない」などと批判する方が世間にいるのも、そんなイメージからなのかもしれません。私はそうは思っていませんが。
いずれ学校を卒業していく子どもたちは、学校という閉じられた空間から広い世界へと羽ばたいていきます。そんな子どもたちを育てる教員が、視野を広くして広く社会に目を向け、日々の指導にあたることは極めて重要だと思います。
ビジネス書は、教員が自分自身の視野を広げるための学びの入口としては最適だといえるでしょう。また、教育現場だけでなく様々な考え方をインプットでき、業務の効率化など自分自身の日々の仕事に役立てることもできます。
教員におすすめのビジネス書4選
ここからは実際に、教員の方におすすめの仕事に役立つビジネス書を紹介していきます。
ビジョナリーカンパニー 時代を超える生存の原則
ジム・コリンズ氏の『ビジョナリー・カンパニー』は、長く繁栄を続ける「偉大な企業」を徹底的に分析し、その特徴をまとめた経営学の古典的名著です。
同書では、なぜある企業が永続的な成功を収め、他の企業が衰退していくのかを、膨大なデータと事例に基づいて解き明かします。長期的な視点、明確なビジョン、顧客中心主義、人材育成など、ビジョナリーカンパニーが共通して持つ特徴を浮き彫りにし、企業が持続的な成長を遂げるための普遍的な原則を示しています。
私はこの本に書かれている、「組織としての明確な目的(ビジョン)を持ち、その上で進化し続けていく」という点が学びになりました。
学校教育においても、当然目的があります。それは、子どもの成長です。どんな子どもを育てたいか?という点については、各学校で「学校目標」や「グランドデザイン」という形で示されています。しかし、日々の多忙な業務の中、いつしかその目的を意識せずに漠然と仕事をしていることも多いのではないでしょうか。
- 教員として、自分は何を目指して指導にあたるのか?
- 今やっている業務は、その「自分の目的」に対して適切か?
などのように、教員としての業務や指導を行う上での自分の判断基準をより意識できるようになった気がします。勤務する学校の目的や、自分自身の教員としての目的を改めて考え直すきっかけを与えてくれたのがこの本です。
「対話と決断」で成果を生む 話し合いの作法
中原淳氏の『話し合いの作法』には、単なるコミュニケーション術ではなく、組織やチームにおける「対話と決断」で話し合いを効果的に進めていくための具体的実践的な内容が書かれています。
同書では、なぜ現代社会において話し合いが重要なのか、そして、効果的な話し合いとはどのようなものなのかを、豊富な事例と具体的な手法を用いて解説しています。特に、話し合いを「対話」と「決断」の2つのフェーズに分けて分析し、それぞれのフェーズで重要なポイントを詳細に説明している点が特徴です。
教育現場においては、当たり前のように「話し合い」が行われています。授業では、当然のように「話し合い」の場が設定され、クラスでの決め事の際には、当然のように「話し合い」によって物事を決めていきます。
私は同書を通じて、そんな「当たり前」の話し合い活動のやり方を考え直す機会を得ました。
- 何を話し合う場なのか?
- どのように意見を出し合うか?
- 出し合った意見をどのようにまとめるか?
など、これまで「話し合い」として人ひとまとめにしていたことを、細分化してとらえられるようになりました。
授業や学級活動、さらには職員同士の会議などで同書の内容が生かされています。
実践行動経済学 健康、富、幸福への聡明な選択
同書は、ノーベル経済学賞を受賞したリチャード・セイラー氏が、共著者のキャス・サンスティーン氏と共に、私たちの日常における「なぜ?」を経済学の視点から解き明かした一冊です。
- なぜ、私たちはついつい衝動買いをしてしまうのか?
- なぜ、健康的な食事を選ぶのが難しいのか?
- なぜ、人は損失を恐れるのか?
このような、私たちの行動を左右する様々な心理的な要因を、「ナッジ」という概念を用いてわかりやすく解説しています。「ナッジ」とは、強制や罰則ではなく、「優しく促す」ことで、人々の行動をより良い方向へと導く手法のことです。
私は、教育現場でベテラン先生などがすでに行っている環境づくりの工夫が、この「ナッジ」だと改めて気づきました。
例えば、子どもが靴を脱ぐ場所にある「足型」の表示です。経験のあるベテランの先生が、足型の表示を床に貼っていました。それがあることで、「靴をそろえなさい」とわざわざ声をかけなくても子どもが足型に合わせてキレイに靴を揃えていたことを思い出しました。強制や罰則ではなく、「優しく促す」というまさに「ナッジ」です。
教育現場では、学習環境の整備が大事であるとよく言われます。先輩の先生から言われたり、研修会などで耳にしたりすることもありました。同書を読んだことで、これまでに私が教わってきたことは、この「ナッジ」などだと私の中で整理された気がします。
ブルシット・ジョブ クソどうでもいい仕事の理論
デヴィッド・グレーバー氏の『ブルシットジョブ――クソどうでもいい仕事の理論』は、現代社会に蔓延する「ブルシットジョブ」と呼ばれる、「存在を正当化しがたいほど、完璧に無意味で、不必要で、有害でもある有償の雇用」について深く掘り下げた一冊です。
同書では、なぜブルシットジョブが生まれるのか、そのメカニズムを社会構造や心理的な側面から分析。現代社会の競争原理や官僚主義が、いかに無意味な仕事を増殖させているのかを浮き彫りにします。また、ブルシットジョブが働く人に与える精神的な負担や、社会全体に及ぼす影響についても考察しています。
私は同書が、学校での「ブルシットジョブ」に目を向けるきっかけになりました。
「この仕事、本当に必要なのかな?」
そんな風に考えられる視点が増えたと感じます。教員の働き方が問題視されている今、同書は多くの教員にとって役立つ視点を与えてくれると思います。
まとめ
ここまで、私がこれまでに実際に読んだ本の中から、教員の方におすすめの仕事に役立つビジネス書を紹介してきました。
ここで紹介した本以外に、「教員におすすめのビジネス書」がありましたら、Xへの投稿などで教えて頂けると嬉しいです。
最後までお読みいただきありがとうございました。